“現役葬儀会社社員”に聞く!遺族が本当に困った「遺言」3つのケースとは?

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「エンディングノート」って知っていますか?
エンディングノートとは、病で自分の意思が持てなくなったり死に直面した時のために、残された人への伝達事項を書き留めておくもの。
いわば、“最後の覚書”です。
内容は自由ですが、自分史や家族の情報、終末治療の意思表示、お葬式やお墓のこと、資産などについて書く人が多いようです。
これらが揃っていることで、万が一の時に生じる問題を解決したり、軽くすることができます。
さて、ここ数年でエンディングノートの知名度は上がり、書店や文房具店でも商品として販売されるようになりました。
決まりごとの多い遺言書とは違い、思いのままに書きつづれるエンディングノートですが、
使いやすい反面、要点を押さえていないとまったく意味のない書き物になってしまいます。
某大手葬儀会社に20年間にわたって勤務し、「考える葬儀屋さんのブログ」の管理人でもある
赤城啓昭さんの著書『子供に迷惑をかけないお葬式の教科書』(扶桑社刊)より、実際に遺族が困ってしまった遺言の例をご紹介しましょう。
■1:「資産」など何を残したのかが不明瞭

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銀行の預金や土地などのわかりやすい資産であれば良いのですが、今はネットバンキングでの取引や、株式の売買をネット証券で行う人も多くなりました。
インターネットの取引には預金通帳も株券もありませんので、どこかに詳細を書き留めておかない限り誰にもわかりません。
万が一のことがあったら、その資産は誰の手にも渡らなくなってしまいます。
当人は意思を持てなくなっていても、病であれば治療費がかかります。
不幸にも亡くなれば、お葬式・埋葬の費用や残された家族の生活費。
お子さんがまだ学生であれば学費など、現実問題としてお金がかかることはたくさん残っているのです。
資産についての情報は漏れなく記しておかないと、家族をさらに困らせることになってしまうので、事細かにしっかりと記帳しておきましょう。
■2:周囲の了解を得ていないお葬式や散骨、延命措置についての希望

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「延命措置は希望しない」「お葬儀は大事にせず、家族のみで済ませること」「亡くなった時は、散骨してほしい」。
このようにお葬式や終末について意思表示をするのは良いことですが、周囲の了解が取れていないと、後見人や喪主になる人に大きな負担をかけることがあります。
最期の時については、遺族の希望もあります。
家族だけのお葬式ではどこまでを近親者とするかも難しく、とくに故人が大きな役職についていた場合は亡くなったという情報がどんどん漏れていきますので、こじんまりと式を行うこと自体が難しくなります。
結局、盛大なお葬式になったとして、側から見れば素晴らしい葬儀でしょうが、任された人には故人の思いを守れなかったという心の傷が残ります。
またお寺の方針にそぐわない葬儀のやり方をしてしまうと、墓に入れてもらえないことがあります。散骨も同じです。
前もって関係者に相談し、遺族が実現可能な希望を具体的に書き留めておきましょう。
■3:そもそも遺言をどこにしまってあるのかわからない…

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せっかく書き留めた遺言も残された人の手に渡らなければ、なかったのと同じこと。それこそ遺族は困ります。
しかしながら、内容は重要な個人情報ですので保管には十分に気をつけましょう。
エンディングノートを残す際は「機密性」「保全性」「伝達性」の3つがポイントになります。
機密性……人目につくところには置かない
保全性……災害などが起きても紛失しない場所にしまう
伝達性……万が一の時に、関係者の手に渡るようにする
今のところ、これらのバランスが取りやすいのはクラウドサービス。

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エンディングノートのデータを自分のPCではなく、インターネット上に保管しておく方法です。
「EVERNOTE」「グーグルドキュメント」「ワンドライブ」のような、ある程度普及していたり大企業が運営しているサービスであれば、世界中でたくさんの人が利用しているのですぐには無くなる心配も少ないです。
秘密漏洩の危険性はゼロではありませんが、パスワードの管理には気をつけ、二段階認証を使えば安心度が増します。
ただし、残された人がパソコンやインターネットが苦手な場合もあるので、
やはり原始的な方法で、定期的に紙に印刷して他の大事なものと一緒にしまっておくことをおすすめします。
【参考】
『子供に迷惑をかけないお葬式の教科書』赤城啓昭・著(扶桑社)