地域トラブルでの警察とマンション管理会社の関係とは【不動産業界で19年働いて分かった!】
マンションとは多くの人が共同生活を送る場であるだけでなく、地域社会を構成するメンバーの1つでもあります。
大勢の人々が活動していれば、予期せぬトラブルも発生します。
近隣で発生する事件から地域社会の一員として関わるトラブルについてはマンションの管理会社が対応窓口となり、防犯カメラの映像確認や入居者の安否確認まで、様々なことで「警察」とも連携します。
今回は、実際に不動産管理の仕事をしている筆者が「警察」と関わったトラブルと警察との応対事例について紹介します。
最も多いのが「防犯カメラを見せてくれ」

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一般の方が警察と関わり合いを持つのは運転免許関係以外ほとんどないと思われますが、不動産管理の仕事をしているとそうは言ってはいられません。
警察手帳を提示した警察官に対してはできる限り協力するというのが原則ですが、状況によっては無理なこともやはり存在します。
会社に警察署から(あるいは警察を名乗って)問い合わせの電話がかかってくるということはよくあるのですが、
電話だと本当に警察なのか判断できないため、そんな相手に立ち入った内容の話をするわけにはいきません。
そのような場合は必ず「刑事訴訟法に基づく捜査関係事項照会」を出してもらっていました。
これは「捜査に必要なので〇〇について教えてください。」という内容の公式書類です。

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警察からの依頼で最も多かったのが「防犯カメラを見せてほしい」というものでした。
近所で事件があり、逃走する犯人の映像が映っている可能性があるというものです。
これは特に問題はありません。見せてあげれば、それで終わりです。
無断駐車に関しては、あまり頼りにならない

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賃貸物件や駐車場を数多くかかえる町田駅前の不動産会社に勤務していた時、契約者以外の車の無断駐車というものがあまりにも多いことに驚きました。
町田という場所は郊外の駅にしては駐車場の料金の相場が高く、
そのためコインパーキングを嫌った外部の者が月極駐車場に勝手に駐車して正規の契約者が利用できないという事がよくありました。
こういう場合ともかく現地から110番です(会社からかけても現地からかけてくれと言われます)。
実はこういった場合、警察はあまり頼りになりません。
私有地の中のことですから、車両を強制的に移動したり、ドライバーが戻ってくるまで張り込むといったことはできないようです。

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ともかくナンバーから所有者を割り出し連絡をとることまではやってくれます。
連絡がつけばそれで良し。
連絡がつかない場合は、ありあわせの紙で注意文を作成してワイパーに挟むくらいしか警察でもできません。
それでも、まずは警察に頼るしかないのです。
一般の方が110番をかけることはほとんどないと思いますが、私はこれまで何回もかけています。
ちなみにスマホで110番すると位置情報が自動的に警察に伝わります。
また、すぐには電話が切れないモードに自動的に切り替わります。
無理なものは無理、と断るケースも

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以前、埼玉県で在日外国人による連続殺人事件が発生し、犯人が数日間逃走を続けたという事件がありました。
その間、警察は周辺の住民の安否確認を電話や訪問により徹底的にやったようなのですが、その中に私の担当するマンションもありました。
週末に千葉のマンションに行っている時に埼玉県警から問い合わせがあったようで、その旨の連絡が本社コールセンターより私の携帯にありました。
折り返し電話すると、例の連続殺人事件に関する件です。
出先で込み入った話ができないこともあって、ともかく捜査関係事項照会を出してくれと言ってその場は電話を切りました。
数日後送られてきた書面を見て驚きました。
安否確認で連絡の取れなかった部屋番号が列挙されていて、その部屋の入居者の携帯番号、勤務先電話番号、そして緊急連絡先の番号まで開示してもらいたいという内容でした。
この時点では犯人は既に身柄を確保されていたのですが、担当刑事に連絡すると「念のため教えてほしい」の一点張りです。
既に犯人が捕まった事件に関して、ここまで情報を出すことはいかがなものでしょう。
会社の顧問弁護士に相談すると「刑事訴訟法に基づく捜査関係事項照会」は任意であるため拒否しても差し支えないとのこと。
意図的にそのまま放置したところ、それ以上の問い合わせはありませんでした。
マンションが反社会勢力のアジトになっていたことも
墨田区のマンションで漏水事故が発生したことがあります。
そのような事故は大して珍しいことではなく、上の階の居住者と連絡をとって部屋に上げてもらい、ともかく水漏れを止めなければなりません。
上の階の区分所有者は転勤で海外に行っており、別の不動産会社を通じて会社経営者だという人に部屋を貸し出していました。
その不動産会社から本人に連絡を取ってもらったのですが、大変にお忙しい方のようであちこち飛び回っていてほとんど部屋にいないようです。

kiko / PIXTA
このマンションでは緊急用としてすべての部屋の鍵を1本警備会社の鍵庫に預けていたのですが、最終的にこの鍵を利用して部屋に入ることについて了解をもらいました。
部屋に入ると水漏れの原因はすぐわかり処置も取れたのですが、とにかく生活感がまったくなかったことに驚かされました。
水漏れに関することなのでキッチン、風呂、トイレ、洗面所以外の部屋には入りませんでしたが、リビングダイニングにテーブルや椅子といった家具が一切ありません(テレビはあったように記憶しています)。
変な部屋はこれまで随分と見てきたので、この時はそれ以上のことは考えませんでしたが、この「会社経営者」氏とはこの時以降まったく連絡がとれなくなりました。

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数日後、この地域の所轄の警察署から連絡があり、この部屋のことについて問い合わせがありました。
刑事によるとこの部屋は振り込め詐欺グループのアジトとして使用されていた疑いが強いという話でした。
警察で防犯カメラを調べると、メンバーと思しき人々は夜中に荷物を運び出してそのまま出て行ってしまったようです。
警察というのは怖いイメージを持たれがちですが、私がこれまで接してきた警察官はどなたも大変に温厚な方でした。
どうしても解決しない上下階の騒音問題に関して所轄の警察署に相談したことがあるのですが、各警察署に置かれた「生活安全課」ではそのような問題にも対応してくれるそうです。
何か困ったことがあれば地域の警察に相談してみるのも、ひとつの方法だと思います。