「ブンマンの最新情報」を「JJ」に掲載する。これって何のこと?

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不動産業界では昔から「ブンマン」「チンマン」という用語が広く用いられてきました。
「ブンマン」は分譲マンション、「チンマン」は賃貸マンションのことです。
インターネットが現在のように普及していなかった時代には、「ブンマン」にせよ「チンマン」にせよ、リクルート社の「JJ(住宅情報)」だけが頼りでした。
本屋の店頭で平積みにされた「JJ」を、営業マンが発売日に必ず買うというような時代があったとは、今では信じられないでしょう。
「それじゃあ、賃貸戸建は略して何て言うの?」と、女子事務員にしつこく聞くような非常識な男性社員が、まだまだ大勢いた時代です。
今ではセクハラですかね!?
どこの世界でも特有の業界用語というものがありますが、今回はブンマンの業界用語をご紹介します。
■「ジュウセツとバイケイを取り交わしたので、キンショウに行ってもらう」って?

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ジュウセツ(重説)は、不動産業界以外の方でも知っている方は多いようですが、重要事項説明のことです。
売買契約にせよ賃貸借契約にせよ、不動産の契約には事前に宅地取引主任者が重要事項を書面で説明しなければならないと法令で定められています。
売買契約と取り交わした契約書のことをバイケイと呼ぶのは不動産業界というよりも、どちらかというと銀行の方に多かったように思います。
キンショウ(金消)とは金銭消費貸借契約書のことで、要するに住宅ローンの契約のことです。

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有名女優がマンションの契約をすると、銀行では「誰が金消を担当するか?」が話題になったそうです。
金消が実行されて売買代金の入金が確認されると、所有権を移転する手続きである「決済」が行われます。
ここで鍵が引き渡され、買主は物件に自由に立ち入ることができるようになります。
営業にとっては決済が終われば案件が一つ完全に終了したことになりますが、何らかのトラブルが発生して決済終了後もそれに引きずられることがあります。
新しい契約を次々と取ってこなけらばならない営業にとって、最も避けなければならないこのような事態を「残務(ざんむ)」と呼びます。
■「ブツアゲ、ネコナシ、そして案内…。数字を作るにはこれしかない」って?

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不動産業界に転身した時に営業所長から言われた言葉です。
おそらく一般の方には何のことかさっぱりわからないと思いますので、以下でご説明していきます。
・「数字」

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これについては不動産業界に限らず広く使われていると思いますが、営業成績のことを意味します。
従って「数字を作る」というのは契約をとってくることです。
不動産の売買は市場に出ている売り物件に買い客が申込書を意味する「買付け」を入れることから始まります。
そのため1件の契約には売主から物件を預かる「物元」と買主から物件を探すことを依頼された「客付け」という2種類の業者が関わってきます。
ここでは「片手」「両手」という言葉が出てきますが、これについては長くなるので別の機会にお話ししたいと思います。
・「ブツアゲ(物上げ)」

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不動産の売却を希望する売主と媒介契約を結んで売り物件を仕入れることを意味します。
どんなにいい物件でも、この媒介契約を結ばなければ業者は売却活動をすることができません。
そのため「売ることを考えている」という問い合わせを受けると、業者は何としても媒介契約を取ろうとします。
客の希望価格が相場を無視したありえない金額であっても、「そんな値段で売れるわけないだろ!」というは表情に絶対に出しません。
・「ネコナシ(値こなし)」

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相場を無視した物件は売れるはずがないので、最終的には価格を下げる必要があるのですが、これが「ネコナシ(値こなし)」です。
物上げした物件を値こなししても最終的に契約に持ち込むためには案内が必要です。
気に入ってもらうために、力のある営業は「見せ方」にも工夫をこらします。
・「当て物」

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その物件をより引き立たせるために、明らかに見劣りする物件を先に見せてから案内したりします。このような引き立て役の物件を「当て物」といいます。
とある業界用語のサイトで「当て物」の意味を「ひどい物件」と書いていましたが、それは違っています。
本命物件を引き立たせるためのものですから結果としてはひどいことが多いのですが、
客が当て物を気に入ってしまい、そちらで契約になったことが私の場合1回だけあります。

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いかがでしたか。
不動産の売買契約の裏側ではこのような言葉が飛び交っています。
賃貸住宅における業界用語は次回にご紹介したいと思います。
思わず「えっ!」と叫んでしまうような事例もご紹介するつもりですので、お楽しみに!