介護職員は見た!冬の2大迷惑ウィルス、インフルエンザとノロウィルス対策

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「冬がく〜れば思い出す〜」
はるかな尾瀬、ではなくて(しかも、原曲は夏です)、冬になると介護施設では毎年流行が懸念される、
インフルエンザとノロウィルスのお話です。
ちなみに筆者は、生まれ故郷の岩手県にUターンして、介護施設に勤務している現役・介護福祉士でございます。
■冬の2大危険ウイルス!

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さて、これからだんだん寒くなってくると、介護施設で気をつけなければいけないことが2つあります。
ひとつはインフルエンザ。
冬になると、けっこうな頻度で流行してしまいます。
介護施設では、風邪などひかないように、部屋の温度管理に十分注意していますが、
職員の子供が保育園や小学校でもらってきたのを、その親である介護職員が施設内に持ち込んでしまう場合があります。
また、面会にくる家族などが、インフルエンザの保菌者になっていたりするのです。

ささざわ / PIXTA(ピクスタ)
もうひとつは、ノロウィルス。
こちらは、生牡蠣を食べたりすると、牡蠣についているノロウィルスが食べた人の体内で増え、ノロウィルス感染者になります。
発症してから治るまでの間に、消毒が不十分な手で食品を触ると、別の人にうつってしまうのです(二次感染と言います)。
こちらも、子供や家庭の感染者を通じて、施設内に菌(ウィルス)が持ち込まれてしまいます。
主に、咳によって飛び散った唾液などにウィルスがいて、それが口や鼻から体内に入ってしまうのです。
■2大迷惑ウィルスにかかると…

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高齢になると免疫力が衰え、ウィルスに弱くなっているので、
インフルエンザやノロウィルスにかかると高熱が出て、脱水症状にもなり、最悪死に至ります。
ということで、インフルエンザが流行する前に病院へ行き、施設に入居している方はもれなく予防接種をしているのでした。
万が一施設の入居者がインフルエンザにかかったときは、一気に体温が40度近くまで上がりますので、
かかりつけ医の事前の指示に従って頓服薬として処方されている解熱剤を飲んでいただき、
余裕がある場合は翌日に病院へお連れしたり、緊急時は救急車のお世話に。
病院のお医者さんからは、解熱剤とタミフルが処方され、施設では治るまで個室(自分の部屋)で隔離状態になります。

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ノロウィルスの場合は、高熱(38度以下)に加えて激しい嘔吐と下痢、頭痛が起こります。
ノロの嘔吐は、噴水のように飛び散るということで(まだ見たことはありませんけど)、食堂で食事をしているときは大惨事ですね。
テーブルの向かいに座っている方が、吐瀉物を浴びてしまうそうです。
経験の浅い介護職員は、慌てふためきます(ここで先輩職員が活躍)。
ノロウィルスは、嘔吐物が乾燥しても、それが塵になって空気中を漂っており、
吸い込むことで感染してしまいます(吐瀉物の処理の仕方が、施設のマニュアルに定められています)。
保菌者が触った食べ物などを口に入れても、強力に感染してしまうそうです。
こちらも、病院で点滴を受け、症状が安定してきたら介護施設の個室で隔離状態。

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インフルもノロも、職員が感染しないようにマスクや防護服、消毒液で殺菌したりと、大変です。
特に気をつけなければいけないのが、原因がわからないまま、病院に普通に受診しに行ってしまうことなのです。
インフルやノロの場合、待合室の皆さんにうつしてしまう可能性があります。

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介護施設では、感染症マニュアルというものがあり、症状に則って対応するよう訓練されていますので、
まあ、ほぼほぼ死に至ることはないけれど、一般家庭の独居老人の方々は、本当に対応を間違えると、
三途の川を渡ってしまうことになるので気をつけなければいけません。
なにせ、倒れたらひとりで救急車を呼ぶのも大変。
「これくらい、寝ていたら治る!」などと思って寝ているうちに、動けなくなるのですよ。
そこで重要になるのが、感染予防なのです。
■2大迷惑ウィルスを予防するには?
けっこう、皆さんは聞いたり見たりして予備知識があることと思います。
介護職員は研修や資格試験で勉強するので、常識の一つです。
一応、書いてみましょうか。
【インフルエンザの感染予防】
1・ワクチン接種

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ネットで調べると、インフルエンザのワクチン接種は効果が薄いなどと書いてあるサイトがあります。
しかし、厚生労働省では、65歳以上の高齢者のインフルエンザ・ワクチン接種を推奨していますよ。
寒くなってきたら、かかりつけの医者や病院に行って、ワクチン接種をしたほうが安全と思います。
2・手洗い

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日常生活における、すべての感染症予防の基本です。
手を洗いましょう。
特に、トイレの後は、かならず!
ちゃちゃっと水道水で流さずに、消毒用石けんをつけて、念入りに手や爪を洗い、流水でよく洗い流す習慣が必要ですよ。
3・マスクをしよう

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くしゃみが出たら、手で口を押さえずに、マスクをしましょう。
くしゃみで飛び散る唾液による、飛沫感染が、さらに感染者を増やしてしまうのです。
上記3つは、普段から心がけていれば、簡単に実践可能なものです。
【ノロウィルスの感染予防】
1・手洗い

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これは、トイレの後は必ず。
便にウィルスが付いていると、手についてしまい、あちこち触って二次感染を引き起こします。
2・食品は加熱する

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生ものには、菌がうようよ。
肉や貝など、中心部まで火が通るように加熱します(85~90℃で90秒以上)。
野菜も、できれば茹でた方が安心です。
3・調理器具の消毒

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主婦の方々は、鶏肉を切った包丁で野菜を切らない、まな板は熱湯消毒する、などなど、基本的なことは学習していると思われます。
器具を使う前と使った後、調理場とともに洗って、清潔に保つ必要があります。
ノロウィルスはアルコール消毒が効きませんので、キッチンハイター(次亜塩素酸ナトリウム)や熱湯を使って除染するのがいいでしょう。
お年寄りや子供がいる家庭はもとより、または地方に親がひとりで住んでいたりする場合もあると思います。
ぜひ、ちゃんと指導してあげてください。
お年寄りは頑固者が多く、なかなか言うことを聞いてくれないかもしれません。
その場合は、かわいいお孫さんなんかに「じいじ、ばあば、ちゃんとトイレの後は手を洗ってる?」
などと言ってもらうのが、効果的かと思います。
■迷ったらすべきこと3つ
救急車を呼ぶべきか迷ってしまう場合には、大きく3つの方法があります。
1つめは、かかりつけ医(がいたら)や、病院の救急外来受付(救急センター)に電話しましょう。

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感染力が高いウィルスなどにやられたら、病院でも院内感染は防ぎたいので、
入り口の指定をされたり応急処置の指示をしてくれるでしょう。
事前にホームページなどで、お住いの病院の電話番号を調べておくと、慌てふためかずにすみます。
2つめは、今のところ(平成29年4月現在)東京都や奈良県、大阪府、福岡県限定ですが、電話番号#7199にかけてみましょう。
救急相談センターに繋がりますので、症状をオペレーターに伝え、指示を仰ぎます。#7199は、全国展開を目指しているようです。
3つめは、全国救急受診ガイド『Q助』を利用してみましょう。
WEB版と、スマートフォンにインストールして使えるアプリ版があり、
「呼吸をしていない。息がない」「脈がない。心臓が止まっている」などの症状を選んでいくと、最終的に救急車を呼ぶかの判断ができます。
介護施設の場合は、救急車を呼ぶ前に、まず個々の入居者のかかりつけ医師に電話します。
素人の自己判断ほど、もっとも危険なことはありません。
幸運にもこの記事を読んで初めてインフルエンザとノロウィルスの危険性を認識した方、
詳細は厚生労働省のホームページに詳しく記載されていますので、寒くなる前にぼちぼち、読んでみてくださいね。
【参考】