マンション購入予定者は知らないとマズイ!? 「準工業地域」の意味って、わかる?
マンションが建設される際、工事現場周辺に「マンション建設反対!」と書かれた幟(のぼり)が林立しているのは、そんなに珍しい光景ではないように思います。
建てる側にとって、どうしても避けて通れないのが、こういった近隣の反対運動に対する対応です。
私はマンション管理会社から親会社であるデベロッパーに約5年間出向していたのですが、その間にマンション用地の仕入れや近隣対応を担当していた時期もあります。
写真週刊誌ネタになるような反対運動が行われた物件で、担当者として建設地に設置した標識に私の名前が書かれていたこともあれば、
近隣説明会で反対派の人々と直に相対したこともあり、実に貴重な経験ができたと思います(二度とやりたくないですが……)。

極楽蜻蛉 / PIXTA
戸建にせよマンションにせよ、せっかく購入した家の周辺でこんな騒動が起きるのは避けたいものです。
実はマンションというものは、建てることができる場所がある程度限られているので、
それが事前に分かっていれば、無駄なトラブルに巻き込まれる可能性は少なくなるのです。
冒頭の写真は南向きで日当たり良好のマンションのすぐ南側に高層マンションが建てられることに対して、北側マンションの居住者が起こした反対運動の模様です。
この人たちが地域のことをもう少し詳しく調べていれば、こんなことにはならなかったのではないかと筆者は思います。
後になって後悔することにならないよう、購入前に周辺環境のチェックは絶対に必要なのです。
■高級マンションが立ち並ぶエリアでも油断は禁物!?

まちゃー / PIXTA
自治体が定める都市計画区域は積極的に整備・開発を行う「市街化区域」と市街化を抑制する「市街化調整区域」に分かれ、
市街化区域の土地利用は用途地域の制約を受けます。
用途地域は全部で12種類ありますが、ざっくりと分けてしまえば「住居系」「商業系」「工業系」の三種類です。
住居系の地域は住居としての環境を保護することを最優先した地域で、
建ぺい率、容積率、高さ、斜線制限、日影規制などにより、建物の周囲に与える影響が最小限になるよう規制がかかります。
このように上部が階段状になっているマンションを見たことがある方も多いと思いますが、
これはルーフバルコニー付き住戸をつくるためではなく、日影規制をクリアするためのものです。
商業系地域は商業その他の業務の利便を増進することを最優先する地域で、そのため周辺環境に配慮するような規制はほとんどない地域といって良いと思います。
工業系地域は主として工業の利便性を追求した地域ですが、軽工業の工場等、環境悪化の恐れのない工場の利便を図る地域である「準工業地域」では住宅や商店も建てることができます。
高級マンションが立ち並ぶ駅前が、準工業地域である場合もあるので注意が必要です。
■マンションを建てられる場所はある程度限られている
マンションを建てるには、まずはまとまった土地が必要です。
そのため、将来マンションに変わる可能性の高いものとしては企業の社宅や福利厚生施設、駐車場、店舗、工場といったものが挙げられます。
複数の住戸が土地を提供する代わりに、マンション内に部屋を貰う等価交換というやりかたもあります。
そのような場所が周囲にあったら注意が必要です。
ここは近隣の反対運動が泥沼化して有名になった場所ですが、もともとは大手電機メーカーの研修施設だった場所です。
マンションが完成して入居が完了して以降も周辺の住戸は反対の幟を降ろさず、それが逆に街の景観を破壊していると批判されました。
現在騒動は沈静化していますが、隣地には大手火災保険会社の研修施設があり、ここが将来どうなるか気になるところです。
こちらは私鉄ターミナル駅の駅前マンションです。
全戸南向きで日当たり・眺望良好なマンションですが、目の前が駐車場です。
商業地域という事もあって将来的には間違いなく同じ規模の建物が目の前に建つことになるかと思います。
住宅地の中にあるゴルフ練習場です。
筆者は約15年前にこの近隣でマンションの営業をしていましたが、当時から売却のうわさが絶えませんでした。
今後どうなるかわかりませんが、このような施設は将来マンションに変わる可能性が高いことだけは間違いありません。
こちらは鉄道の線路沿いのマンションです。
右側の植え込みの中はちょうど地下に潜る場所です。
こういった立地のマンションでは日当たりは半永久ではないかと思います。
住環境に対する規制が緩い準工業地帯で工場が売却された場合、跡地には周囲より規模の大きなマンションが建つ可能性が高いので注意が必要です。
5階建ての分譲マンションの隣に立つ11階建てのマンションです。
この辺りにはまとまった空き地がもうないため、11階建ての上層階からの眺望は当面変わらないと思います。
住宅を購入する場合、このような点に注意して現地の周辺環境をチェックしてください。
■知らなかった、では済まされない。周辺環境は必ず自分で調べよう

Linquedes / PIXTA
冒頭に挙げたマンションが立地している場所は商業地域で、環境よりも利便性を優先した地域です。
前面の空き地はもともと低層の戸建住宅が並んでいた場所のようなので、恐らく等価交換で土地をまとめたと思われます。
高架の線路に面していて日当たりと眺望が将来にわたって確保される価値の高い場所であるため、「等価交換」という手間のかかる手段をとる値打ちは十分にあります。
ですから、こういった事態が発生することは購入時に十分予想できたはずです。
今後デベロッパーと近隣住民の間で話し合いの場が持たれると思いますが、商業地域においてはこのようなことは日常的に行われており、反対運動が実を結ぶ可能性は低いと思います。

tampatra / PIXTA
商業地域に立地する物件であることは契約時の重要事項説明書に書いてあるはずですから、知らなかった(知らされなかった)という言い訳は通用しません。
後になってこのようなことにならないよう、住宅を購入する際は自分でも現地周辺を徹底的に調べるようにしてください。
それはモデルルームで設備や内装の話をするよりもよっぽど大切なことです。
近隣の反対運動に対し、経験豊富な業者側が駆使するテクニックについてはまた別の機会に書きたいと思います。