創業115年。「南部鐡器」のトップメーカーの工場に潜入してきました!
東北の一家に一台(?)あるという、南部鉄(鐡)器です。
日刊Sumaiの読者の皆さんの家にも、南部鉄器の鉄瓶、ありませんか?
地元に、しかも幼少期に住んでいた家のすぐそばに、世界的にも有名な南部鉄器の老舗・岩鋳の工場があると偶然知って、
11月になってすっかり寒くなった平日の朝に行って参りました!

岩手県盛岡市仙北町にある『岩鋳鉄器館』。朝早くからやってる!
■南部鉄器は、あまりにも歴史あるシロモノだった!
ネットでのリサーチよると、「南部鉄器」の歴史は平安時代まで遡ります。
作り方は、今も昔から変わらぬ、砂や粘土で作った型に銑鉄(せんてつ/純鉄より融点が低い)を流し込んでできた鉄瓶などを、
木炭の火で焼いて錆止めするという技法で、昨今は工場のオートメーションで作られているかと思いきや、どれも職人さんたちの手作りでした。

1,400〜1,500度の高温になっている銑鉄を流し込む素焼きの鋳型と、それを作る道具『挽き型板』ですって
南部鉄器が岩手県で栄えたのは、南部藩の殿さまが京の職人に茶の湯釜を造らせたのが始まりとも言われています。
そして、「南部鐡器といえばあれ」と言われる鉄瓶は、茶釜を一般人にも使えるように改良したものだとか。
その歴史にはいろいろな出来事があったのでしょうが、残念ながら大河ドラマ的な要素を見出すことは叶わず。
なので、解説は以上でおしまいです。

お値段に、ギョッ!
そういえば、生家には何個も鉄瓶がありました。
子供の頃にはその価値に気づくことなく、うん十年経ってやっと、地元、いえ、日本をも代表する伝統工芸品をめでることになったのでした。
■南部鉄器の魅力とは!?
よく言われているのは、鉄瓶でお湯を沸かすと鉄分が溶け出て、貧血予防になるということ。
鋳物でできたフライパンや鍋は、保温性が高く、温度にムラができにくいので、料理に最適です。
鉄器のフライパンは、使い続けていくと油が染みわたり焦げつきにくくなるそうです。

静岡新聞の記事のコピーが貼られていました。様々な材質のやかんで、水道水のカルキ抜きの実験をしたそうです
そして、「3世代も同じ南部鉄器を使っている」なんて声が上がるほどの耐久性。
3世代といえば、100年以上使えるんですか!? まさに「じぇじぇじぇ!」です。
お湯を沸かす鉄瓶の大敵は湿気で、水を入れっぱなしにしておくと錆びてしまうという欠点があります。
近頃の製品は、中をホーロー加工にして錆びにくくしているのだそうです(その場合、鉄分は溶け出ません)。
ガスコンロだけではなく、火を使わないIHクッキングヒーター(電磁調理器)でもお湯が沸かせる仕様の商品もあります。
しかし、機能的な面はさておき、その魅力は伝統工芸としての美しさ!
値段が高いだけのことはある、すばらしい工芸品を所有する喜びを感じさせてくれるのです。

近代的なデザインの南部鉄器もありました。こちらは、スポーツカーのフェラーリ エンツォをデザインした奥山清行さんが手がけた、新作ティーポット。南部鉄器は海外でもすごい人気だそうです
■南部鉄器のトップメーカー・岩鋳の工場に潜入!

ヨーロッパへ輸出するために、1970年代には、すでにカラフルな色の鉄瓶を作っていた!
南部鉄器といえば、盛岡市の岩鋳!(別に岩鋳さんの回し者ではないのですが)
岩鋳は、1902年(明治35年)創業の南部鉄器の老舗。
盛岡市内・仙北町に、鉄瓶の製造工程が見学できて、いろいろな種類の南部鉄器(当然、岩鋳製)が展示されていて、
さらに買うことができる『岩鋳鐡器館』があるのです。
ここは入場料無料。帰りに鉄瓶を無理やり買わされることもありません。
実は、筆者のお目当ては、岩鋳さんが作っている南部鉄器製のコーヒーポットとドリッパーのセット(定価/10,800円)をゲットすることなのでした。
お湯を沸かすだけなら鉄瓶でよいのです。しかしですよ、南部鉄器のドリッパーなんて!
コーヒー好きには、垂涎のアイテムではありませんか! 南部鉄器で沸かしたお湯を使うと、コーヒーの味がまろやかになるそうですよ!?

ちまたで話題の、南部鉄器製コーヒーポットとドリッパー
写真のコーヒーポットセット、ものすごい人気商品でして、ネット販売では、どこも品切れ。
そこで、作っているところ(岩鋳さん)に行けば手に入るかもしれないと思い、ノコノコと出かけていったのです。
……写真が撮れたのですから、現物はあったんです。でもですよ、手書きのポップにあるとおり、品切れ中!
売店にいた大きなカラダの店員さんに聞いてみました。
店員さん「ああ、コーヒーポットですね。今、作ってるんですけど、来年の2月まで予約分を作るのに忙しくって……」
店員さん「予約したいんですか? 来年の2月以降になってしまうんですよ……」
絶句! おわたっ!!(※終わった)

型から出した鉄瓶をさらに熱して、火から取り出しているところ
ま、目的はいきなり頓挫しましたけど……。
岩鋳さんの展示品をじっくりと撮影させていただき、鉄瓶の制作過程を見学させていただいたので、いいか!
ちなみに、筆者が工場に到着したのが、朝の8時30分。
職人さんは、もうすでに仕事をしていました。
工場(こうば)の床は土でできていて、昭和の町工場にタイムスリップしてしまったような感じでした。
以下、とっても素敵な南部鉄器のギャラリーをお楽しみください。

外国の方が好きそうなデザインの、モダンな鉄瓶。カラー鉄瓶は、パリの紅茶専門店からの依頼で作ったのが最初だそうです

鉄鍋もオシャレ

香炉!

賢治!

キッチンでもリビングでも映える急須。IH対応、ホーローびきで錆びにくいのがコレ

40万円以上!! なんちゅう値段!? の高級鉄瓶もありました
【参考】
※ 岩鋳