ねこと暮らせば。【カリフォルニャンのマレーネとの日々】vol.2

 

なぜ、ブラック&ホワイトのねこが欲しかったのか、その理由についてお話しします。

人生において、出会いほどたいせつなものはない、私はそう思っています。

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■ブラック&ホワイトのネコが欲しかった理由

以前、独りで古い大きなハウスに住んでいたことがあります。

引っ越してきたその日、荷物の合間を何気なく横切るネコがいました。

通りを隔てたお向かいの人が飼っているバスターでした。

バスターはブラック&ホワイトのネコで、いささかオーバウエイト気味で、トストスと音をたてて歩きました。

翌日からバスターがうちに来るようになりました。

朝まだ暗いうちから、キッチンの裏口のドアの前で待っています。

日長一日、うちにいて、夜、私が寝るころになると、おもむろに表のドアから本宅へ帰っていきました。

お向かいは昼間は留守のようで、私がずっとうちで仕事をしているので、きっと退屈しのぎだったのでしょう。

 

■声の出ない猫、バスターとの日々

バスターはおとなしく、いつものんびりとしていました。

口だけ鳴く形で開きましたが、声は出ませんでした。

頭の黒い部分の形が、ちょうどオカメのようで、とても愛嬌がありました。

私も独りだったし、お互いとても気が合いました。

お向かいにはないしょで、私は遠慮がちにごはんをあげ、バスターは遠慮なく食べていました。

バスターに出会うまでは、私はどちらかといえば犬好きで、いつか頼りになる大きな犬を飼いたいと思っていました。

一年が経ち、今のハウスに引っ越すことになり、バスターともお別れになりました。

荷物をすっかり運び出したガランとしたハウスに、気がつくと、バスターだけがポツンと残っていました。

もう、ここには居られないんだよと、無理やり抱えて出そうとすると、ツルツルとする木の床に精一杯しがみつくのです。

ツルツルとすべるのに、声の出ない分、めいっぱいの体重で、必死でしがみつくのです。

 

■人生において、出会いほどたいせついなものはない

引っ越しを終えてから、今日もバスターがキッチンのドアの前で待っているだろうと思うと、たまらない気持ちになりました。

3ヶ月ほどしてから、偶然会えるかもしれないと、前のハウスに行ってみましたが、バスターの姿はありませんでした。

きっと本宅でのんびりと日向ぼっこでもしているのでしょう。

ハウスを照らす日差しは秋の気配で、その分、あたりは以前よりもずっと静かになったような気がしました。

バスターに出会わなかったら、マレーネとの出会いもなかったかもしれません。

バスターのおかげで、私の中に良いネコ観が育ってくれました。

人生において、出会いほどたいせついなものはないと、私はいつもそう思っています。

写真はただ一枚だけ残された、あのころのバスターの肖像です。

その後、バスターをモデルにイラストを描いてポストカードを作成、カードのバスターは地元の小売店で10年を超えるベストセラーとなりました。

カードが出来上がった日、私はお向かい家のポストに、そっとカードの小さな束を入れておきました。

いろいろなことに右往左往していたあのころの日々に、いつもぬくもりをくれていたバスターへのせめてもの感謝でした。

モデルはさらにマレーネが引き継いてくれています。

イラストに2匹の異なるモデルが存在していることには、たぶんだれも気づいていないと思います。

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