「買ってはいけないマンション」を見分けるのは不可能!? 7つの理由とは

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インターネットの世界では無数の情報があふれかえっていますが、
その中でも「プロが選んだ」「専門家が教える」
といったような枕詞が付いているとやはり信頼度が違います。
「プロ」や「専門家」を名乗るために最も効果的なのが資格ですが、
不動産に関わる資格は数が多く、それぞれ扱う分野が違います。
そのためたとえ「○○士」「○○主任者」という肩書があったとしても、
それだけで相手を信用することは危険です。

プラナ / PIXTA(ピクスタ)
ちなみに筆者が最近投稿した記事には「不動産のプロが推す○○」というタイトルが付きました。
筆者は宅地建物取引士で「元」管理業務主任者です。
フロント業務などもう二度とやりたくなく、
更新の手続きをしなかったため昨年失効しました。
それでも不動産業界での実務経験の三分の一はマンション管理であり、
一応プロを名乗ってもいいのではないかと思っています。
■ネットでよく見る「買ってはいけない物件の見分け方」という記事について

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ネット上で「プロが教える」と銘打った
「買ってはいけない物件の見分け方」「管理がダメなマンションの見分け方」
といった「ハウツー物」の記事を最近特によく見ます。
記事の内容としては、マンションを購入する際の事前のチェックポイントを紹介しており、
大抵の場合、「管理組合の財務状況」「過去の修繕状況」「管理状況」「入居者同士のトラブルの有無」
の4点が挙げられています。
そして「長期修繕計画書」「総会の議案書」「直近の決算資料」「総会議事録」
と言った資料を取り寄せることを勧めています。
こういった記事を書くのは「一級建築士」という場合が多いようですが、
マンションの構造や強度、あるいは修繕工事といったことに関しては豊富な知識があっても、
不動産取引やマンション管理の実務に関しては、どうやらご存じないのかもしれません。
その理由を、7つに分けてご説明します。
■1・資料の入手はやろうと思えばできるが、簡単ではない

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「これらの資料は、閲覧することが認められており、仲介業者に取り寄せてもらいましょう」
こんなふうによく書かれていますが、実はそんなに簡単な話ではないのです。
確かに区分所有法や国土交通省作成の「マンション標準管理規約」において、
組合員又は利害関係人は書面で請求すればこれらの資料を「閲覧」できると定められています。
しかし取り寄せるためには印刷して持ち帰らなければなりません。
仲介会社は申し込みが入った物件について、
契約書類を作成するために必要となる事項について「重要事項調査依頼」
というような書式で管理会社に開示請求しますが、これには手数料が発生します。
閲覧した書類の印刷についてもこれに準じた対応になるかと思いますが、
申し込み前の段階で、手数料がかかる面倒な業務を仲介会社がすんなりとやってくれるか疑問です。
(検討中の全ての物件でこれをやるということですよね?)
筆者はフロント時代に「重要事項調査依頼」については何度となく対応しましたが、
それ以外の「閲覧請求」は一度も受けたことがありません。
■2・総会資料を読むのは簡単じゃない

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仮に資料が入手できたとしても、今度はそれを読み解くのが大変です。
管理組合の財務状況については直近の総会議案書(議事録ではない)に書かれています。
しかしここには膨大な量の数字が並んでおり、この中のどこを見ればいいのか、
そしてその内容は適正なのか、一般の人には難しいのではないでしょうか。
ちなみに収支決算報告はほとんどの組合で第1号議案の資料の中にありますが、
筆者のマンションの総会資料では、収支決算資料はA4サイズで41ページありました。
■3・修繕履歴をまとめるのはフロントでも大変

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過去の修繕履歴を調べて長期修繕計画と突き合わせ、
計画通りかチェックすることが大切、とされていますが、
修繕履歴を調べようと思ったら相当な過去から資料を取り寄せなければなりません。
修繕に関しては一般会計で実施する場合と修繕積立金で実施する場合の2通りあり、
それぞれ実績を計上する場所が違います。
過去の膨大な資料の中から数字を拾うのはフロントでも大変です。
■4・長期修繕計画と実際の修繕は、ずれるのが当たり前

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長期修繕計画は、各工事の周期に関しては若干短めに設定されているのが常です。
そのため計画上では工事を実施する時期であっても、
点検してみると全く問題が無いというのはよくあることで、その場合は先送りして様子を見ます。
また工事を実施するにしても、計画よりもできるだけ安い金額になるよう努力します。
組合員全体の財産であるお金はそれだけ大切に使わなければならないのです。
長期修繕計画はあくまで目安であって、計画と実際の修繕にはズレがあるのが当たり前です。
ですから計画書と直近決算書を照らし合わせ、数字が一致しているか確認することなど無意味です。
■5・管理状況のチェックにはオートロックの突破が必要となる

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「管理状況」を見抜くために「共用部の清掃状況」「自転車置き場の整理具合」「掲示板」
をチェックするよう勧めている記述もよく目にします。
内見以外のタイミングでこれらをチェックするためには、
その都度オートロックを突破しなければなりません。
また掲示物の貼り替え状況を確認するためにはそれなりの期間がかかり、
恐らくその間に部屋が無くなります。
■6・管理組合の内部事情は聞かれても答えないのが普通

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マンション内の問題を事前に把握するために
「上下階や両隣にどのような人が住んでいるか管理会社に聞く」
「管理人に管理組合の理事か管理組合活動に熱心な住民を紹介してもらう」という記事を見たこともあります。
個人情報についてやかましく言われる現在において、
このような情報を管理会社が外部の人に教えるわけがありません。
またマンション内のトラブルを把握するために総会議事録を読むことを勧めている記事もありましたが、
議事録に書かれているのはあくまで「質疑応答の要旨」であり、発言の全てではありません。
居住者間のトラブルに関する発言が仮になされたとしても、
個人が特定されるような事項は議事録には記載しないものです。
■7・チェックばかりしていると部屋が無くなってしまう

KY / PIXTA(ピクスタ)
マンションの管理というものは、様々なものがからまりあったややこしい世界です。
ですから「管理の良し悪し」を外部の人が短期間で見抜く「コツ」など存在しないと断言してもいいと思います。
大手が管理している大規模物件であれば優秀なフロントが担当しており、
さらに課長、支店長といった複数の眼でチェックされている確率が高いということしか言えません。
やはり不動産の購入というのは「イチかバチか」なのだと思います。
以前にもこのような記事を書きましたが、どうやら何度も繰り返さなければならないようです。
不動産取引は売買も賃貸も基本的に早い者勝ちの世界で、
「早く決めないと部屋が無くなる」というのはあながち嘘ではありません。
事前のチェックも大切ですが、
やり過ぎてその間に部屋が無くなる事がないよう注意してください。