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ウン十年後には、ひょっとしてSumai読者の皆さんも利用するかもしれないデイサービス。
訪問介護と同じく初期に利用する介護サービスのひとつです。
高齢になったご両親(お孫さんから見ると、じいじとばあば)が「デイサービス」に通っているというお宅、
日本全国、津々浦々結構な割合であると思います。
「デイサービスって、施設の中で何をやっているんでしょうね?」
疑問が浮かぶのは、ごもっともですね!
サービスを利用する本人以外は、未体験ですもんね。
現役介護福祉士である筆者、とんちんがちょこっと説明いたしましょう。
■デイサービスは、託児所の高齢者版!?
いえいえ、デイサービスは、自宅での介護で手のかかる高齢者を一定の時間施設に預けておく、
というようなところではありません(一部そのような側面があるのは否定できませんけど…)。
デイサービス(=通所介護)とは、簡単に書くと、
利用者が毎日(または週に数回)デイサービスを行っている福祉施設に通って(「デイに行く」なんて言ったりします)、
入浴や昼食、レクリエーションなどのサービスを受けることです。

IYO / PIXTA(ピクスタ)
自宅に引きこもりがちな独居老人は、
デイに通ってほかのおじいちゃんおばあちゃんと交流を持つことで社会との関わり合いを維持できます。
遠方に離れて暮らす息子さんや娘さんは、
高齢の両親がデイサービスに通っていると、とりあえず安心ですね。
高齢になっても心身ともに健康的な日常生活を送るために、デイに行くのです。
また、自宅で親の介護をしているという息子さんや奥さんは、
介護対象者がデイサービスに通っている間に自分の時間が持てるので、
介護疲れや介護によるストレスが減らせます。
■デイサービスでの一日の流れ

デイの送迎車はこれより大きいものが多く、いっぺんに10人くらい乗れたりします
デイサービスを利用すると、平日の朝9時頃には自宅まで施設の車が迎えに来てくれますね(日曜日はお休み)。
施設に到着したら、まずは職員や施設看護師によるバイタル測定を受けます。

バイタル測定とは、血圧と心拍数、体温を測ることです
数値に異常がなければ、順番に入浴することになります(毎週の入浴日と、入浴回数はあらかじめ決められています)。
お風呂に入らない人は、お昼まで職員と一緒に体操やゲームなどのレクリエーション(=レク)を行いますよ。
レクでは、トランプやクイズ、牛乳パックなどを使った工作、ちぎり絵、習字、輪投げなどなど、
みんなで運動したり頭を使う遊びを行います。

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はたから見ると、ちょっと幼稚園のお遊戯っぽいのですが、
風船を使って、床に落とさないように相手にパスする「風船バレー」はものすごく盛り上がりますね。
頭を使うレクでは、認知機能の低下により単純な計算や漢字テストなどできない方がいますので、
各自のレベルに合わせたものを実施。
一方、入浴組は、入浴担当の職員に洗髪や洗身を手伝ってもらいながら
(利用者各自の能力により、職員がお手伝いする範囲が決まっています)、お風呂に入ります。
入浴後は、レクに合流します。
たいていの施設では、午前10時になったら「水分補給」ということで、お茶を飲みつつ休憩。
そして12時には、みんなでお昼ご飯をいただきます。

各自の健康状態に留意したメニューが出ます。基本、美味しくてヘルシー
お昼ご飯の用意は、基本的に施設の職員(または、厨房の料理人)が行います。

凝ったおやつがウリの施設なんてのがありますよ!
元気な方は、テーブル拭きをしたり、食器の片付けをしたりと積極的に手伝ってくれるのです。
洗い終わったお碗に米粒がついていたり洗い残しがあったりする場合があるので、
さりげなく(プライドを傷つけないように)職員が洗い直したりします。
食後は歯磨き(口腔ケア)して、一時間程度のお昼寝(施設によります)→またレク→3時のおやつ→またレクといった流れで午後4時頃まで過ごします。
そして、施設の車に乗って自宅へと送られていきます。
施設の職員は、後片付けで掃除をしたり、利用者の記録を書いたりして、
一日の業務が終了したら帰宅します(デイで働く介護職員は、夜勤や宿直業務がありませんので、小さい子供がいるママさんが多いのです)。
■デイサービスあるある
デイサービスばかりではありませんけど、
ひと筋縄ではいかない高齢者が来ると、介護職員の悩みの種は尽きません。
人生の先輩(高齢者)といえど“人間ができている”人格者は稀でして……、
「あの人の隣は絶対に嫌だ!」「私、あの人とは合わない」
などと対人関係で好き嫌いが激しかったりするのです(ダークサイドが垣間見れますよ〜)。

Greyscale / PIXTA(ピクスタ)
そんなわけで、まず職員はレクの席順で悩むことに……。
入浴時には、ポカポカしてお腹が緩んでしまうのか、
便失禁(大きいほうのお漏らし)をしてしまう利用者がいたりします(認知機能が低下して、便意のコントロールができない場合が多々あり)。
これはもう、大惨事! お湯を入れ替えたり浴室を消毒したりと、
現場は蜂の巣を突いたような騒ぎになることもしばしば。
こんな時、経験豊富な介護職員がいると、粛々と事後処理が行われます。
逆に、便に不慣れなパートのおばちゃん職員なんかは大騒ぎしてしまい、
後で上司に注意されたりするのですよ。
入浴では、お風呂がとても好きな人もいれば、頑なに入浴を拒否する高齢者もいます。

さるとびサスケ / PIXTA(ピクスタ)
入らない理由を尋ねると「昨日入った」「面倒くさい」「私は温泉にしか入らないのよ!」
などと、言い訳のオンパレード。
こうなると職員は、説得したり、おだてたりして
なんとかお風呂に入ってもらう努力をしなければいけません。
まあ、入浴もレクも強制ではないのですが、
施設によっては厳しい先輩職員がおり、入浴拒否を喰らった新人職員がどやされたりして……。
そうだ、幼稚園児の子供たちや地域ボランティアのおばちゃんたちによる合唱、
大道芸人などの慰問が来ることが多々あります。
子供には無条件で目を細めるのに、おばちゃん連中には批判的だったり、
興味がないものには全く関心を示さなかったりするのが面白いです。
■いいデイサービスとは?
これはもう、「ご飯が美味しかった〜」「あそこのスタッフさん、ハンサムなのよっ」
「お話し仲間ができて、明日が楽しみだわ!」などなど、
利用者が家族にポジティブな感想を述べる施設は、
グッドなデイサービス施設だと思います。

プラナ / PIXTA(ピクスタ)
反対に、「あそこには、もう行きたくない……」なんてことを聞いたら、
担当のケアマネ(=ケアマネージャー。介護支援専門員)に話して、
別の施設を紹介してもらったほうがいいでしょう。
介護の現場では、人間関係が重要なポイントとなります(利用者も職員も)。

施設の車でお花見や紅葉狩りに出かけたり、レストランに行ってお食事をする外出レクを行っている施設もあります。利用する前に、どんなサービスがあるのか、ぜひチェックしてみてください
「デイサービスに行きたくないなんて、文句ばっかり言ってワガママな親」
と思うことがあるかもしれません。
それは、いたしかたありませんね。
でも、ぜひ発言には注意深く耳を傾けていただきたいと思うのでした。