2つの棟を行き来できる楽しい家【住まいの設計】

 

 

日刊Sumaiでは、住宅雑誌「住まいの設計」、マンションリノベ専門誌「リライフプラス」から、

選りすぐりの家をピックアップしてご紹介していきます。

田舎に広い庭付き一軒家を建て、子どもをのびのび育てたい!と都会から妻の故郷への移住を決めた夫妻。

静岡・富士市・大山さん家族の、手作りの魅力に満ちた家と庭には、暮らしの楽しみと喜びが感じられます。

 

広い敷地の中ほどに建つ、分棟式の建物。

田畑がまばらに残る高台の住宅地。

T字路の突き当たりに見える湾曲したコンクリートの塀の奥に、何やら楽しげな絵が窓に描かれた細長い建物が見えます。

設計にあたった服部信康さんは分棟にした理由をこう語ります。

「土地の広さを生かして、あちこちから景色を取り入れたかったし、LDKを主役、個室を脇役にせず、それぞれに楽しい居場所をつくりたかったんです」

敷地内に入ると目の前に広がるのは、青々と茂った広い芝生の庭。

実は建物は分棟式で、道路から見える2階建ての棟と板張りの平屋を玄関のあるブリッジ状の箱がつないでいます。

2棟ともボリュームが小さいため、庭はうらやましいばかりの広さ。

子どもたちは家の周りをぐるぐる走り回って遊んでいます。

左/2棟をつなぐ中央に玄関。右/中央は玄関の裏手にある勝手口

アプローチのレンガ敷きも芝生の植え込みも自力で敢行。

レンガは共同設計者・西岡さんの指導のもと、家族総出で3日がかりで敷きました。

「僕は途中ですぐ休憩するんですが、妻は朝から晩までやってましたね」と夫。

妻の母も大活躍とのこと。どうやら妻の手づくり好きは母譲り?

L字型に開いたLDKの開口部から庭を望む

庭は奥へ行くにつれて上り斜面になっており、室内からはより芝の緑がよく見え、塀は腰かけるとちょうど足が着く高さになっています。

 

室内は平屋棟がLDKをまとめたパブリックゾーン

木の質感を生かしたシンプルな平屋棟のキッチン側から見たリビングダイニング。

家と庭をつくるにあたり、夫妻は積極的に施工に参加。

庭のレンガを敷き込み、芝生を植え、子ども室の床・壁・天井の塗装も行いました。

費用削減が目的というより、特に手作業が大好きな妻にとっては、むしろ楽しみたい気持ちが強かったから。

床を1段下げ、アイランドカウンターを配したキッチン。

家具のようなキッチンは食卓と同じく、家具工房タンペレが製作したオリジナルです。

こちらはLDKの一角に造り付けたデイベッド。

出張や転勤の多い夫が不在の際、母子3人で平屋棟だけでコンパクトに暮らせるよう、寝る場所も確保しました。

 

個室棟は妻が手を加える「立体キャンバス」

天井が高く、屋根の形がそのまま表れた2階の子ども室。

床・壁・天井の塗装にも、家族みんなで参加。

大きな開口部から見下ろす風景や、正面の壁の「おうち型」が、子どもたちの記憶に刻まれるでしょう。

壁も子どもたちの作品でいっぱいで、お揃いの子ども服や、端切れを活用した右手ののれん風のカーテンもすべて妻のお手製。

子ども室の窓際を見下ろしたところ。窓の外に弧を描いたコンクリートの塀が見えます。

天窓付きのロフトも設けられています。

現在はまだ親子でリビングで寝ることが多いため、子ども室はもっぱら遊び場として使用中。

 

2棟をつなぐ中央には洗面室

モザイクタイル貼りの洗面台には2つの洗面ボウルを設置。

妻はいずれここで染め物もやってみたいと語ります。

左は洗面室の一角にさりげなく配したトイレ。引き戸を開けるとモノトーンのインテリアが出現。

右はボーダータイル貼りの浴室。シンプルで美しい空間です。

クロゼットも兼ねたオープンで広い洗面室は、ゲストルームや工作室など、多目的に活用できそうです。

妻は竣工後も日々手を加えているそうで、インテリアはすっかり住み手の色に染まり「ほんとに楽しい」とうれしそうに話してくれました。

 

設計/服部信康建築設計事務所西岡計画工房
撮影 中村風詩人
住まいの設計2017年1・2月号より