やり手の営業Sさんに連れられ、見学した土地。
それはなんと……。
鳥夫が上京したての頃に格安で住まわせてもらった遠い親戚のアパートから目と鼻の先!!
ずっとずっと憧れていた花の都東京に、やっとこられた喜びを想い出させる地。
鳥夫の心をわし掴みにしたのは言うまでもありません。
あんなに「四ツ谷に住んだらさ……」などと輝く未来を描いていたくせに、わずか15分で「正直、俺は、四ツ谷よりここの物件が良いと思っている」と言い出しました。
四ツ谷から新宿に…

J6HQL / PIXTA(ピクスタ)
こんにちは。
新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥です。
もともと東京で一番好きなエリアは新宿でした。
しかし土地探しを始めたところ、四ツ谷のにおいに惚れてしまい、この頃の鳥は、四ツ谷で暮らす未来しか描けなくなっていました。
でも鳥夫が急に心変わりですよ。
ひとり舞い上がって、お空をピーピー飛び回っています。
急に近くのT字路まで小走りしていったかと思えば、「ほら、こっち来てみて! ここから西新宿のビルが見えるんだよ!!」
と手を振って鳥を呼ぶはしゃぎっぷり。
冷めた目で見上げる鳥の顔に、フンを落とされた気分になりました。
「私は四ツ谷がいいって言ってるじゃん!! まだここを買うなんて決まってないからね!!」
と思わず釘を刺してしまいました。
しかし名将Sさんに加え、同盟国鳥夫まで新宿陣に寝返ってしまったこの状況。
もはや四ツ谷陣の陥落は時間の問題となっていきました。
これまで四ツ谷エリアで紹介された物件はどれも悪条件(狭小過ぎ、車が入らない、スーパー遠い等)でした。
やはり四ツ谷を狙うには予算が少なすぎるのです。
それに対し、この新宿エリアの土地。
予算3,000万円に対し3,500万円とオーバーしているとはいえ、
- 最寄駅より徒歩圏内
- 21坪
- 整形地
- 車も置ける
- スーパー徒歩圏内
- 新規分譲で、ガス、水道などの引込料込み。 境界のフェンス新調
など、とっても好条件。
鳥も、心では「四ツ谷がいいの!」と言い張っている一方で、頭では「この物件を選ぶ方がまっとうだよね……」とわかっていました。
土地が建築条件付きに…

freeangle / PIXTA(ピクスタ)
営業Sさんが、この土地は建売住宅が予定されているけど、注文住宅希望の鳥夫婦のために土地だけ売ってもらえるよう交渉してくれるとのこと。
鳥夫はかなり前向きなご様子でした。
そしてほどなく受けたSさんからの回答は、「分譲建売ではなく、建築条件付きということにしてくれるそうです」というものでした。
鳥夫婦はこのとき、まだ土地探しを始めて2か月です。
家づくりに関してはまったく勉強できておらず、「建築条件付き」がどういうものか知りませんでした。
当時の鳥は漠然と、
「『渡辺篤史の建もの探訪』に出てくるような家がいいなあ」
と思っていて、ネットでスタイリッシュな新築画像を眺めては「そうそう、こういう家」と思っていました。

naka / PIXTA(ピクスタ)
無知な鳥は、建売住宅ではなく注文住宅さえであれば、鳥のイメージするスタイリッシュな家を建ててもらえると思っていました。
しかし、当時の鳥が漁っていた新築画像は、どれも設計事務所を構える建築士先生方の「作品」だったのです。
建築条件付きで希望の家は建つのか!?

fujiyaman / PIXTA(ピクスタ)
洋服で例えるとわかりやすいと思います。
建築士による作品扱いの新築は、一からデザインされ、生地も厳選され、創造されるオートクチュール。
建築条件付きの新築は、デザイン・生地は決まっていて、体の大きさに合わせてサイズが変更できるセミオーダー。
良い悪いではなく、ニーズが違うのです。
オートクチュールは洗練され人目を惹くけど、高額だし時間も手間もかかる。
セミオーダーは無難な見た目だけど、低価格だし意思決定が少なくて済む。
(上記は一般的な傾向です)
そして鳥が惹かれていた新築画像は、どれもオートクチュールの方でした。
だから具体的なアクションとしては、土地だけ購入し、設計事務所を構える建築士先生を選定し、設計してもらう方法を取るべきだったのです。
「間取りが自由にできる」「住設機器の色が選べる」けど基本的には建売住宅仕様の「建築条件付き」による家づくり(※)では、鳥の思い描いていた新築にはならないのです。
しかし不勉強な鳥夫婦は、そのことに気づけませんでした……。
(※あくまで鳥夫婦のケースであって、建築条件付きにも自由度の幅があるようです)
(鳥)