連載
新宿に建売住宅の値段で注文住宅を建てて住んでいます

苦しい家づくりの幕開け【新宿に建売住宅の値段で注文住宅を建てて住んでいます】

 

こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。

スタイリッシュな注文住宅をイメージしていた鳥にとって、建築条件付きでの家づくりは、もうまったく愉しさがなく、苦しいばかりでした。

今回はその幕開けのお話です。

 

やり手の営業Sさんから建築条件付きの土地を紹介され、「とりあえずR社からプレゼンテーションを受けてみましょう」と、土地の売主のもとへと拉致された鳥夫婦。

土地の売主は、R社という中小デベロッパーでした。

東京の人気エリアの土地を仕入れ、狭小地として分譲し、建売住宅や建築条件付きの家を建てて、儲けている会社です。

いや~、ガッポリ儲けているのでしょう。

小さ目とはいえ、都心の超人気駅の駅近に建てられた自社ビルはたいへんシャレオツでございました。

 

※ 過去の記事を読む

 

建築条件付きのプレゼンテーションって?

PHOTO NAOKI / PIXTA(ピクスタ)

Sさんに連れられてR社の会議室に入ると、テーブルに冊子が並べられていました。

そしてちょっとふくよかな設計部長さんから、「今回の物件の基本仕様は、これです!」と一方的に説明を受けました。

どうやら「プレゼンテーション」とは、新築で採用する住設機器を紹介される場だったのですね。

そして冊子に印刷されていたのは、LIXILのシステムバス・トイレ・洗面台、クリナップのシステムキッチン、永大の建具と床材など、いかにもな既製品の画像の数々……。

「えっ……」

その頃、鳥がネットで漁っていた新築画像は建築家物件ばかりでしたので、造作の浴室、造作のキッチン、造作の洗面台、無垢の床が中心でした。

xiangtao / PIXTA(ピクスタ)

あまりのイメージの違いに衝撃を受けるばかり。

「違う、ぜんぜん違う……」ということは分かるのですが、どう説明したらよいのかもわからない!

固まる鳥のために、鳥夫がなんとか説明してくれましたが、鳥夫もよくわかっていないのでうまく伝わらない……。

場がシーンと静まりました。

今思うと、建築条件付きの家の説明を聞きに行っているのに「建築事務所設計による注文住宅がいい」と話すのは変だとわかりますが、当時の鳥夫婦はわかっていませんでした。

でも、きっとSさんは、鳥夫婦の抱いていた希望イメージはわかっていたと思います。

そして鳥夫婦の希望する家が、建築条件付きでは叶わないことも……。

それでもSさんは、淡々と自分の仕事をこなしていきました。

なんだか気まずい雰囲気となってしまった場をSさんがとりなして「とりあえず間取図のたたき台を作って見積額を算出してみましょう」という話になりました。

鳥はR社に建ててもらう家に漠然とした違和感を感じても「じゃあどうすればいいのか」という明確なアクションはわかっていなかったので、つい流されてしまいました。

ここから鳥夫婦の苦悩の家づくりが始まりました。

 

そそくさと上階に戻っていったSさん

設計部長さん達と別れ、Sさんと鳥夫婦の3人でエレベーターを降りました。

そして1階についたところで、Sさんが「あっ、すみません(笑)、私、傘を置いてきてしまったようで……。すみません、こちらで失礼します(ニッコリ)」と言って、そそくさと上階に戻っていってしまいました。

ピンと来ました。

「ああ、私達のいないところで、R社と話をするんだな」って。

もともとこの物件は、仲介業者Y社とデベロッパーR社が懇意にしているからこそ、まだ土地の分譲中という初期段階で話が来たものです。

たった一度きりの付き合いとなる鳥夫婦に対し、Y社とR社の付き合いは、これまでも、そしてこれからも長く続いていく関係

仲介業者Y社としては、顧客第一と言いながらも、R社も大事にしないといけない。

これまでのSさんの紳士で誠実な態度を見て、「私達のためだけに動いてくれている」と勝手に思い込んでいた自分に気づき、ちょっぴり恥ずかしさを感じました。

Sさんは私達のことをどう思っているんだろう……。

今まさに、上階のR社の会議室では、私達がSさんだから正直に伝えた世帯年収や予算の情報が、R社の設計部長さんに流されているのかもしれない。

そしてSさんと設計部長さんとの間で、勝手に落としどころが決められているのかもしれない。

オトナの駆け引きが苦手で、隠し事のない単純な人間関係しか築けない鳥夫婦です。

百戦錬磨のSさんのしなやかな手に絡めとられていることにも気づけず、「鳥夫婦が自ら望んだ・納得した形」で、Y社とR社が決めた落としどころに連れてゆかれてしまうのかな……。

手の平で転がされるかもしれないとは思っても、転がされている実感がつかめないのであれば、ただされるがままになるしかないという、この諦めに似た感じ。

不動産という大きな買い物をするにあたって、自分達の弱さを感じました。

 

■この連載の一覧を見る