簡単に使いこなせない「防災セット」

簡単に使いこなせない「防災セット」、いかがですか?

皆さんは「防災セット」を家に備えてありますか?また、実際にそれらを試しに使ってみたことはあるでしょうか?
先月下旬に簡単に使いこなせない防災セットが発売されました。
それが、アウトドアグッズだけで構成した防災セット、「ライフライン・サポートパック(LIFELINE SUPPORT PACA)」です。

masa / PIXTA(ピクスタ)

家庭にある防災セットは、一度は購入した時にバッグから中身を出して確認をすると思います。
しかし、それ以降は保存食を入れ替える時以外は、このセットの出番がこないことを祈りつつ部屋の隅に置かれている状態だと思います。

そもそも、懐中電灯やラジオ、保存食・保存水、軍手やロープ、簡易トイレなどは万が一の時に子どもからお年寄りまで誰もが使えるものなので、試す必要もありません。

一方で今回紹介する、簡単には使いこなせない防災セット「ライフライン・サポートパック(LIFELINE SUPPORT PAC)」とは、いったいどんな防災セットなのでしょうか?

 

簡単には使いこなせない理由は…能動型だから!

こちらがその防災セットです

パンフレットには「これらの道具は説明書をよくお読みになり、普段から使用して慣れておくことをお薦めします」という一文が入っています。

防災セットは万人に使えるものという常識を覆したこの商品は、どのようにして生まれたのでしょうか?

アウトドアのノウハウを災害被災時に役立てようと活動しているカワサキキャンプ代表の田村寛之さんとステップキャンプ代表の寒川一さんに話を伺いました。

ーー最初にライフライン・サポートパックと一般的な防災セットとの違いを教えてください。

寒川:
従来の防災セットは被災者が行政などからの公的な援助がくるまでの間、乾パンを食べ水を飲んで待つというように受動型なんです。
一方、このセットは被災者が自ら動く能動型です。これが大きな違いです。

機能は「飲料水の確保、火おこし、湯沸かし、電気・照明の確保」という4つに絞りました。

1回使っただけでは使いこなせない道具が入っています。それが、火おこしと湯沸かしです。

アウトドア好きの人でもこれをすんなりとできる人は少ないとも思います。

ですから、2回3回4回と何度も使い込み、ようやく使える道具になるのです。

防災セットなのに面倒と思うかもしれませんが、そうして手際よくお湯を沸かしてお茶やコーヒーを淹れられたら達成感があるし、ちょっと楽しいと思いませんか。

セット内のナイフと身近にある牛乳パックを使った火おこし

田村
お父さんが子どもの前でやったら、かっこいい(笑)。
僕がこの防災セットで一番大事にしたかったことは「かっこよさ」です。

従来の防災セットは積極的に使いたいと思う道具ではなく、使わない方がよいと思う道具で構成されています。
そこには自分たちが使いたいと思うものがなかったんです。

なので寒川さんたちに何が必要なのか検討していただいて、機能性だけでなく、思わず手に取って使いたくなるようなファッション性の高いもので構成してもらいました。グッズを収納するバッグはスウェーデンのスクールバッグです。

ーー防災セットは使わないで済むのならそれに越したことはないというのが普通の考え方です。

使いやすさやコンパクトさは求められてもファッション性は求められません。

「かっこよさ」という言葉が出てきたのはビックリです。普段から使い込むといった視点もアウトドアグッズならではですね。

 

大規模災害が起きて最初の3日間は公的な援助を期待してはいけない

 

2月下旬に開催された防災プログラムで道具を使った実演をする寒川一さん(手前)

ところで大規模災害が起きてから最初の3日間は公的な援助を期待してはいけないと言われています。

その間は自助・共助、つまり自分と家族、近所の人たちと助け合ってなんとかするしかない。

寒川
これまで多くの自治体と地域防災について話し合いをしたり協力をしてきましたが、そこで感じるのは災害へのとらえ方の違和感です。
行政としては仕方がないことかもしれませんが、どうしても対象が万人で広すぎます。

災害は誰も望んでいませんが、それを非日常のものとして遠ざけている限り、防災訓練はネガティブなイメージが付きまとい住民は訓練会場に足を運んでくれない。

ーー日常と非日常を断絶しているんですね。

寒川
一方でアウトドアというのは日常と非日常がつながった一連の流れの中にあります。
そのために作られたグッズを普段から上手に使いこなせるようになっていれば、万が一の災害の中でそれが生きます。

僕はアウトドアライフを通して普段は遊び楽しみ、豊かな人生を送りたいと思っています。

そして災害の多いこの国では、アウトドアで培った技術や知恵が、万が一の災害時に役に立てると確信しています。

防災体験型プログラムを開催したり、この防災セットを作ったのも、その確信があるからです。

もしも外出先で被災しセットが手元になかったとしても、普段からセットを使いこなしていれば、その場にあるものを使って対応できる力が身につくはずです。

こういった人がひとりでも増え、都市部での災害時に混乱が少しでも緩和できたらと思っています。

災害時には自助共助が求められる

田村:僕が主に活動している川崎市は人口約150万人です。
数字の裏付けはありませんが感覚として、大地震が発生したときに備蓄食料を市内の被災者の手元に3日間届けることができるか、果たして疑問です。
その時に行政だけの力を当てにはできません。

公助的な物資が届くであろう災害発生から3日間を行政に頼らず自分の力で過ごすには普段から準備しておかなければいけない。

救援をただ受動的に待つではなく、生き抜くために自ら動かなくてはならないと思うんです。

今回のサポートパックはそのために最低限必要なものでそろえました。

寒川
これがあれば万能というわけではありませんし、万人向けのものではないかもしれません。
でも、この価値がわかる人に届いてほしいと思っています。

ーーありがとうございます。次回はひとつひとつのグッズの使い方を教えてください

 

【プロフィール】

カワサキキャンプ代表 田村寛之さん

18歳から横須賀の米海軍基地の消防士として勤務する傍ら、川崎への引っ越しを機に地域活動を始めた。
ゴミ拾い団体「グリーンバード川崎駅チーム」から始まり様々な活動を通して一般社団法人カワサキノサキを仲間と立ち上げる。
「守る」「育む」「伝える」をテーマにカワサキの魅力を発信し続けており、防災プログラム「カワサキキャンプ」だけでなく
JRとタイアップした川崎の野菜を販売する武蔵小杉駅開催の「カワサキノメグミ」など数多くの地域イベントをプロデュース。
多くの人達の期待を背負ってカワサキの未来をデザインし続ける。「川崎経済新聞」編集長。

 

ステップキャンプ代表 寒川一(さんがわ はじめ)さん

アウトドアライフアドバイザー。自身が40年近く楽しんでいるキャンプのエッセンスをいかに楽しく人生に取り入れるかを三浦半島から発信している
焚火カフェ、STEP CAMPを主宰 UPI OUTDOOR PRODUCTS アドバイザー
池田書店『新しいキャンプの教科書』
山と渓谷社『CAMP LIFE 焚き火主義』監修
NHK『ラジオ深夜便』定期出演

 


ライフライン・サポートパック ¥30,000+税
問合せ先:カワサキキャンプ事務局
〒212-0011 川崎市幸区幸町2-593モリファーストビル4F 一般社団法人カワサキノサキ内
TEL:050-3772-7785 e-mail: hello@kawasakinosaki.or.jp

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