住宅ローンは何歳までに完済すべきなの?宅地建物取引士に聞きました

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住宅ローンを利用する場合、「いくら借りればいいのか」や「毎月の返済額をどのくらいにしたらいいか」等だけではなく、住宅ローンを「何歳までに完済したらいいのか?」で悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
実際に住宅ローンを利用している人がどれくらいの期間で完済しているか、住宅ローンを完済するべき年齢は何歳ぐらいが好ましいのか、宅地建物取引士の高幡和也さんが解説します。
住宅ローンは35年間払い続けなければならない?

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住宅ローンを利用する場合、各金融機関ではそれぞれ「完済時年齢」の上限を設定していて、最長でその年齢まで住宅ローンを組むことが可能です(一般的な借入期間は最長35年となります)。
たとえば、住宅金融支援機構のフラット35の場合、完済時年齢の上限設定は80歳。申込時の年齢が満70歳未満の人なら利用することができ、借入期間の上限は下記のように算出します。
- 借入期間の上限:35年、もしくは「80歳」−「申込時の年齢(1年未満切上げ)」のどちらか短い年数(※その他条件有)
- 例:年齢満40歳の場合、「80歳」-「41歳(1年未満切上げ)」=39年なので、最長借入期間35年
フラット35の場合、計算上は満44歳以下の人なら最長で35年間の住宅ローンを組むことが可能です。
ただし、この計算どおりに35年返済の住宅ローンを組んだ場合でも、実際に35年間住宅ローンを払い続けなければならないわけではありません。
当然ですが、住宅ローンはいつ完済しても良いのです。理解しておきたいのは、住宅ローンの「約定返済期間」と「実際に完済するまでの期間」は別物だということです。
多くの人が約16年で完済している!?
では、住宅ローンを利用している人が実際にどれくらいの期間で完済したのかを見てみましょう。
住宅金融支援機構の「2019年度 民間住宅ローンの貸出動向調査」によると、住宅ローンの利用開始時に設定した返済期間(当初設定した返済期間)の単純平均は26.7年となっています。

※住宅金融支援機構「2019年度 民間住宅ローンの貸出動向調査」 より
しかし実際には、完済までの期間は単純平均で「15.7年」となっています。つまり多くの人は、当初設定した返済期間以下で住宅ローンの返済を終えていることになります。
あくまで単純平均なので、すべてのケースに当てはまるわけではありませんが、例えば40歳で35年の住宅ローンを組んだ場合でも、多くの人は56歳には返済を終えていることになります。
多くの人が約16年という期間で完済しているにも関わらず、なぜ住宅ローンは30年前後という長期の返済期間を設定する人が多いのでしょうか?
余裕を持った返済計画を立てられるよう、長期で設定

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「住宅ローンはできるだけ早期に完済したい」「ローンの期間はできるだけ短い方がいい」…。誰もがそう考えるのは当然のこと。だからといって、当初から住宅ローンの返済期間を短く設定すると毎月の返済額がグンと高くなってしまいます。
住宅ローンは自宅を担保にして借りるローンなので、万一その返済が滞ってしまうと、自宅が金融機関に差し押さえられたり、強制競売にかけられたりして、住まいそのものを失ってしまう事態になりかねません。
そのため、将来的に不測の事態が起こっても住宅ローン返済に影響が出ないように、余裕を持った返済計画を立てることがとても重要となります。
当初の返済予定期間を長期にして毎月の返済額を抑えるこで、余裕を持った返済計画が実現します。また、毎月の返済額を抑えることで、定期的な「繰り上げ返済」も可能となるのです。
繰り上げ返済をしなければ「ずっと返済が続く」

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繰り上げ返済とは、返済中に融資金の全部または一部を繰り上げて返済することで、返済額に応じて借入期間を短縮することができます(月々の返済額を少なくすることもできます)。
逆に言えば、繰り上げ返済をしなければ当初設定した期間中、ずっと返済を続けなければなりません。
たとえば、定年年齢60歳の企業に勤務する現在40歳の人が、75歳までの住宅ローンを組んだ場合、定年までに住宅ローンを完済しなければ退職金や貯蓄で残りのローンを一括で支払うか、または退職後も毎月のローンを支払い続けなければなりません。
長期の返済期間を設定したにもかかわらず、その返済計画(毎月の返済額、ボーナス返済額)に余裕がなく、繰り上げ返済が難しいような場合は、もう一度資金計画の見直しが必要かもしれません。
繰り返しになりますが、繰り上げ返済をしなければ30年ローンなら30年間、35年ローンなら35年間、「ずっと返済が続く」のです。
自分なりの「目標完済年齢」を設定しよう

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住宅ローンの返済開始年齢、勤務先の定年制の有無、投資による将来的な収支バランスなど、それぞれの状況によって理想の完済年齢は違います。
目標とする完済年齢の目安としては「勤務先の定年年齢」もしくは「単純平均完済期間(返済開始から約16年程度)」などが挙げられます。
当然、早期の完済が理想的ですが、無理な返済計画は住宅ローンの延滞を招いたり、日常生活そのものに影響を与えかねません。決して無理な計画を立てず、自分なりの「目標完済年齢」を設定することを心がけましょう。
【参考】
※住宅金融支援機構「2019年度 民間住宅ローンの貸出動向調査」
●教えてくれた人/高幡和也さん
宅地建物取引士・ライター。不動産業界で約30年、大企業の事業用地売買や未利用地の有効活用、個人住宅のディベロップメント、事業用・居住用の賃貸管理まで多種多様な業務を経験。「不動産取引の専門士」の視点で気になる情報を発信中